前回のあらすじ
「伊勢神宮がなぜ世界遺産に選ばれないのか?」という素朴な疑問から、その理由を考えてみようと、前編では「世界遺産の種類」や「登録申請を行うための前提条件」について軽くお話しました。そこで見えてきたのが「そもそも日本は伊勢神宮を世界遺産にしようと思っていない!」ということです。
何故、日本は伊勢神宮を候補に挙げていないのでしょうか?
世界遺産とは真逆の考え方?!伊勢神宮を支えるトコワカ思想とは?
皆さんは「トコワカ」という言葉をご存知ですか?漢字では【常若】と書き、簡単に言えば読んで字のごとく「常に若く、常に新しくあれ」という思想です。
石と木。どちらに耐久性があるかは、問うまでもない。
しかし、パルテノン神殿は廃墟となり、神宮は二十年に一度、神殿を新造して神々を遷すという式年遷宮によって、古い形体を保ちながら常に若々しい姿を見せるのである。古の精神と技術を守り伝えながら、永遠に連鎖させていくシステムをもつ神宮は、常若の聖地。永遠を確立する文明のモデルといっても過言ではない。常若の思想-河合 真如 (著)
伊勢神宮は20年に一度新しい社殿を建て神様にお移り頂き、古い社殿は解体して更地にしてしまいます。この「常に新しくあり、永遠に滅びない」という伊勢神宮の【良さ】が、逆に世界遺産の登録に至らない最大の原因のひとつなのではないでしょうか。
思想の部分を無視して建造物として考えれば、神宮は20年ごとに建て替えの行われる建物。それを世界共通の遺産と言えるのかどうか・・・。言い方を変えれば築20年ですからね。。

神宮の良さが逆に世界遺産の考え方と相反していた
よくよく考えれば神宮は「遺された産物」でありません。常若精神によって常に新しさを保ち、過去を過去にせず1300年前の姿をそのまま今に伝えています。世界遺産は、言わば「過去の栄光である遺産を【保存】していこう」という考え方。伊勢神宮の存在はある意味その正反対の立場にあるのかもしれません。
無形文化遺産ならあり得る?
世界遺産は不動産であるべきということを上では述べましたが、ユネスコは他にも「形のない伝統芸能や儀式、または書物などによって残された文化も多数ある」という考え方をもとに、世界遺産とは別の枠組みで「無形文化遺産条約」を採択しています。
日本でも能楽や歌舞伎、雅楽のほか、奥能登のあえのこと(石川県)やアイヌ古式舞踊(北海道)など22件が登録されています。(2013年12月現在)
伊勢神宮は神宮の歴史や様式を今に伝える常若の精神や文化や伝統、1300年続く遷宮や関連行事(お木曳やお白石持)、木遣りに甚句、全国の民謡に影響を与えた伊勢音頭もあります。江戸時代のお伊勢参りや御師制度など掘れば色々とありますよね。それら一体は日本の歴史を形成する中でとても重要な文化だったのではないでしょうか。こちらの登録なら可能性はゼロではないんじゃないかな?と少し期待をもっています。
伊勢人としての誇り

神域を流れる五十鈴川
伊勢神宮は歴史的にも文化的にもとても重要で他には例をみない類まれない存在であることに変わりはありません。世界遺産とはならなくとも、先人たちがそうされてきたように、伊勢に住む私たちが誇りをもって次世代へこの伝統文化を受け継いでいけばいいだけのことなのかもしれませんね。

伊織

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